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公開日:2022.03.11

繋がり合い続けることで紡ぐ未来の減災 〜テクノロジー×自治体×スポーツが防災のためにできること〜

日本は海と山に囲まれ、水資源が多く四季の移ろいに彩られた国ですが、その一方、世界でも自然災害が特に多い国でもあります。東日本大震災で起こった事実を風化させない、そして震災の教訓を次世代へ紡ぎ、避けることのできない自然災害を「減災」に繋げるために。私達のできることを改めて考えます。

目次:

    アンカー・ジャパンが「災害時における物資供給に関する協定」を締結する岩手県陸前高田市 戸羽太市長 (以下、戸羽市長) 、そして同市と友好協定「高田フロンターレスマイルシップ」を結び、オフィシャルトップスポンサーを務めさせていただいている株式会社川崎フロンターレ藁科義弘 代表取締役社長 (以下、藁科社長) 、そしてアンカー・ジャパン株式会社 代表取締役CEO 猿渡歩 (以下、猿渡) の3名が、東日本大震災への想い、そして防災へ対するそれぞれの想いを語りました。

    絶望の中で感じた光は「繋がり」の力

    戸羽市長「3.11当時は、もう本当に全てがコテンパンにやられてしまい絶望に近い状態の中にいて、市民皆が下を向いているような状況でした。今まで先人が築いてきた歴史や知恵が全て津波によって流されてしまった時に、これからどのように復興していくのか、本当に自分たちの力だけで、あるいは国や県も含めて行政の力だけで、子どもたちの将来も含めて未来を具体的に描けと言われても、なかなか難しかったのが現実だったんですよね」

    戸羽市長「川崎フロンターレさんは、震災後すぐの4月に陸前高田の子供達のために、『フロンターレの算数ドリル上巻』を直接届けてくださり、また同時に、未来を描くのが難しくなっていた状況の中、子供達へサッカー教室も開いてくださいました。まさに絶望の中で、繋がりから感じることのできた一筋の光でした」

    藁科社長「算数ドリルを届けさせていただいたのは、津波で教材が流されてしまった陸前高田の公立小学校教員が友人の川崎市内の教員に相談し、その後フロンターレに問い合わせがあったことがきっかけです。即断即決で算数ドリル800冊とサッカーボールに選手たちのサインをいっぱい書いて、ライトバンで現地へ向かいました。スタッフも選手もとにかく何かしなきゃいけないという思いが強かったんでしょうね。」

    藁科社長「川崎フロンターレは、当時は優勝経験もなく、恐らく現地の子どもたちもほとんど知らないチームだったのではないでしょうか。けれども、スポーツには人を笑顔にする力があります。理屈ではなく、心の琴線に触れるというか。当時は、何か深く考えたわけではなく、スタッフも選手も何かしら、例え自分達が無名で大きな影響力がなかったにせよ、少しでも『みんなが笑顔になってほしい』その一心で動いたのだと思います。」

    20220311_1

    (©️KAWASAKI FRONTALE)

    「電気」は災害時に必要なライフライン

    猿渡「私は3.11の当時、仕事柄、被災者の皆さんが第2次災害に合わないためにも『情報』をどのように得ることができているのかということを大きく懸念しておりました。水や食料、毛布もそうですが『情報』も命を守るためにとても大切だと考えており、被災者の方でも障がいのある方や高齢者の方は、どのように情報を得て逃げることができているのだろう、そんなことを心配していました。被災された市民の方はもちろんのこと、市民を支援する側の自治体側にも、情報を得て配信するライフラインである電気は大切です。そんな当時の想いがあったからこそ、今アンカー・ジャパンとして各自治体への災害時における電源確保や携帯端末の充電のサポートは私たちが行うべき活動だと思い実施しています」

    戸羽市長「まさに、これだけスマートフォンが普及した世の中では、災害時には電気は重要なライフラインです。これは3.11の経験を通して強く感じたことですが、寒かろうが、お腹が空こうが、まずは『自分の大切な人と連絡が取り合える』ことが何よりも気持ちを安心させてくれます。大切な人の安否がわからず気持ちが追い詰められることが一番辛いことです。だからこそ、アンカーさんにはもっと自治体との連携を広めてほしいと思っています。」

    復興で大切だった「諦めない気持ち」、そして風化を防ぐために必要なコミュニケーション

    戸羽市長「そして、復興のために何よりも大切だったのは、ダメだと思って諦めるのではなく頑張ったら奇跡って起こせるよねとか、なんとか食らいついていったら、何か良いことがあるのではないのか、そういった気持ちでした。震災の4ヶ月後のなでしこジャパンのワールドカップの優勝は、正にそういった気持ちを後押ししてくれました。陸前高田は小さいけれどスポーツが盛んな地域です。だから我々も復興の中で体育館を優先して復活させました。その後はフロンターレさんに多大なサポートいただきながら、『川崎フロンターレ 東北のカリフロニアフィールド』というサッカー場の新設にも至っています。フィールドをかけまわる子ども達の笑顔から、スポーツは前を向く気持ちを強くしてくれるなと改めて感じます」

    藁科社長「サッカー場の名前で気づいたかもしれませんが『カリフォルニアフィールド』ではなくて『カリフロニアフィールド』なんです。フロンターレのフロですね、駄洒落です (笑) 。私たちの目的は興味を持ってもらうこと、くだらないと思われてもいいんです。なんか面白い駄洒落だなとか、なんでも良いので、フロンターレが面白い話題を振り撒いて、それがきっかけで陸前高田のことを知ってもらう、3.11で起こったことを知ってもらう、防災の意識を多くの人に伝えることに繋がればと考えています。」

    藁科社長「陸前高田市との11年の取り組みにおいて、我々のやっていることが、全て正しいなんて全く思っていないんです。ただ、知ってもらい何かを感じてもらうことが大切だと思っています。『何をやっているんだフロンターレ?』と一人でも多くの方に思ってもらうことは、くだらないことでも、何でも知ってもらうきっかけになっているはずです。無視されてしまったら誰も何も感じません。どんな形になっても良いので、多くの人とコミュニケーションをとるきっかけをつくって、出来るだけ3.11の件を風化させずに防災のための対話を始めることが私たちの役目だと思っています」

    猿渡「フロンターレさんの多くの人に興味を持ってもらう工夫、コミュニケーションスキル、そして地域貢献の本気度は素晴らしく、実際にJリーグのクラブの中で『ホームタウンで大きな貢献をしている』クラブとして10年連続1位に選ばれています。陸前高田市とアンカー・ジャパンが繋がれたきっかけも、フロンターレさんです。繋がることで私自身もそして企業としても防災のためにできることを自問自答、そして社員やユーザーの皆さんと対話するきっかけをいただけていると思っています」

    20220311_22020年に陸前高田市に誕生した「川崎フロンターレ 東北のカリフロニアフィールド」 (©️KAWASAKI FRONTALE)

    減災とは「後悔」を減らすこと

    戸羽市長「フロンターレさんやアンカーさん、企業の皆さんには被災をした時にどのようなものが役立つのかを考えていただき、製品等をどんどん開発をして、ビジネスを拡大していってほしいです。防災に関するビジネスが大きくなることは、人々に防災の意識を啓発することにつながります。そのために、陸前高田市の被災者とか市役所から聞き取り等をしていただくなど、私たちを存分に使ってほしい。大半の人は頭でわかっていても『自分は大丈夫』と考えている場合が多い。それではダメなんです。実際に防災の備えがないことで被災した際に感じたのは『後悔』なんです。」

    戸羽市長「自然災害をすべて防ぐことは出来ません。しかし、減災はできます。減災は何かと問われたら、私は「後悔」を減らすことだと考えています。自分が被災したと仮定をしたときに、何に困ると思いますか?何を後悔すると思いますか?例えば、飲み物や食べ物がなければ買っておけばよかったと後悔する。私自身、家族と一緒にいない時に災害が起こったとき、連絡が取れない。ああ、うちの奥さん大丈夫かな、子ども大丈夫かなと。なぜ連絡する方法をあらかじめ決めておかなかったんだろう、そういった強い後悔がありました。だから次世代にその「後悔」を少しでも減らしてほしいと考えています」

    藁科社長「戸羽市長がおっしゃるような3.11の後悔を少しでも減らす、減災に繋がるために企業としてできることはなんだろうと考えると、私たちはメーカーではないですが、先ほどお伝えしたような『スポーツの力』や『エンターテインメントの力』を持って、選手やスタッフが世の中に伝えていく訴求力って多分ものすごく大きいかと思っています。私たちのそういった力を使って、アンカー・ジャパンさんが展開されているような『ポータブル電源』などの製品を減災のために必要不可欠なものとして、広めていくようなビジネスは、お互いのためにも、そしてその先にある社会のためにも意義のある取り組みだと思います。」

    猿渡「戸羽市長、藁科社長のお言葉は本当にありがたい限りです。Ankerグループのミッションは『Empowering Smarter Lives』です。Empoweringは訳すと『力づける』『力を与える』という意味があります。災害の復興において、元の生活に戻るための力になる、そしてこれからの減災のために、少しでも後悔を減らすための力になる、そういった信念を持って製品開発や共にできるビジネスを考えたり、そして自治体との連携もさらに広げ、私達のミッションを果たせるように努めていきたいです」

    20220311_3
    Ankerが陸前高田市内の主要な避難所に提供している特別災害対策セット「POWER BAG」

    支援だけではない、継続的に「支え合い」続けることがもたらす意味

    藁科社長「私達のできることは限られていますし、100点には届かないかもしれない。しかし、細々とでも『継続』して共に支え合う、一時の支援というロングパスだけではなく、共に応援しあうショートパスというのを繋ぎ続けたいと考えています。3.11のあの日、あの時、あの場所で起こった事象、事件、事故というのはずっと考え続け、語り継いでいく必要があるんです。川崎フロンターレの全社員にはコロナ前までは、毎年一度は必ず陸前高田に行くことを会社として促してきました。それは実際に現地に赴くことで、生の声を、現場を聞いて見て『自分ごと』にしてもらいたいからです。そこから社員として以上に、人として成長してほしい。クラブのフィロソフィーの一つとして、やらねばならぬことは陸前高田との交流だと私は思っているんですね。」

    戸羽市長「よく産学官連携と言いますが、私達のような地方の自治体は『どこに頼れる、共に歩める企業さんがいるのだろうか?』と感じたこともあります。しかし、フロンターレさんやアンカーさんとの繋がりが続いていることで、地方に居ながらも色々な可能性があるんだということを実感できました。復興というものも、より創造的なものになっていったと思います。フロンターレさんのような一流のクラブチームが、選手全員でこの田舎に来てくださるなんて、本当に夢みたいな話ですし」

    猿渡「私も、フロンターレさんとのスポンサーシップや、陸前高田さんとの『災害時における物資供給に関する協定』などの繋がりは、企業としてのSDGsに関わる取り組み以上に、社員のモチベーションやエンゲージメントを高めるために何より大切なことだと考えています。応援する側も元気になる、学ぶことができる、働く意欲につながる。ポータブル電源なども、実際の仕事で開発やセールスに携わっている社員達が、自分たちの仕事の意義というものを実感することができる。本当に貴重な機会です」

    企業の「強さ」を防災のための「影響力」へ

    藁科社長「私は、自分が社長として着任した時に全社員選手に対して伝えたのは、『3年後に必ず優勝するんだ』ということでした。なぜなら、『強さ』を持つことが本当の意味で、影響力を持ち、陸前高田市との取り組みなども力強く、広く伝えていけると考えたからです。良い取り組みも自己満足ではダメなんです。優勝するという強い気持ち、この強さがないと支援さえも中途半端なもので終わってしまう。実際に2017年に初優勝してからは、選手も企業としても影響力が増し、そのことがきっかけで陸前高田市との活動も知ってもらう機会も増えました。結果として防災意識の啓発にもつながっていると思います。」

    猿渡「藁科社長の考えに私も深く同感します。私たちは“充電”のグローバル・リーディングブランド『Anker』を展開していますが、やはり一番であることにはこだわりたい。それは社会的な取り組みの観点からも重要だと考えています。多くの方に役立つ製品を届けることで、その分社会に貢献できることも増えます。私たちが展開する、災害の備えとして重要なポータブル電源等の製品を多くの人に知ってもらい、皆さんの防災に役立ててほしい。企業として力をつけて邁進し続けることに尽力しないと、本当の意味で陸前高田をはじめとして、3.11で被災された方の想いを紡いでいけないと感じています」

    戸羽市長「陸前高田市はSDGsが注目される以前から、障がいのある方や高齢者に優しいまちづくりをしましょうということを掲げています。3.11でも、障がいのある方や高齢者で亡くなられた方の割合は健常者に比べると倍だというデータが出ているんですね。これは車椅子の方であったり、耳の不自由な方であったりが、情報がうまく取れなかった。あるいは、いざ逃げようと思ってもなかなか上手に逃げられなかったという事実の反省を生かし、全ての人にとってより良いまちにしたいと考えています。我々は、3.11の反省や後悔をですね、皆さんにお伝えすることで、皆さんの命を守ることに繋げていきたい。強い想いで強いまちを作り上げていきたいと考えています。ぜひこれからも共に繋がりあい、支え合うことで、次世代へ防災の意識や想いを紡いでいきたいですね」

    アンカー・ジャパンの自治体との連携に関する詳細はこちらのページからご確認ください。

     

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